那須塩原市塩原で高原ホウレンソウ3haを作付けする石井一吉さんは、乗用管理機を改造し、土壌くん蒸剤の散布とマルチ被覆を同時に行える機械を自作しました。「『どうにかならないかな』と感じる部分にこそ、作業をより楽にするアイデアの種が眠っています」と話します。
20分で3aが完了 後部にハロー取り付け 溝切り、土寄せも

石井さんは20~75mのハウス104棟で、ホウレンソウを3~4回作付けます。「肉厚で棚もちの良いホウレンソウ栽培を心掛けています」と話します。腐植土や鉱物由来の土壌改良材を豊富に使用するなど、土作りには特に気を配っているといいます。
「ホウレンソウは作付ける土壌によって、4~5年で連作障害が出るため、土壌消毒が欠かせません」と話す石井さん。萎凋病(いちょうびょう)で夏場の高値の時期に全滅してしまったこともあったそうです。
以前は手作業で溝切り、農薬散布による土壌消毒、マルチ張り、土寄せを行っていましたが、2人で1棟2時間ほど。山の斜面に建てたハウス内で四つんばいになりながらの作業は腰や膝に非常に負担がかかっていました。

6月中旬に1度消毒
製作した機械は、倉庫にあった乗用管理機の後部にハローを取り付け、土壌消毒しながらマルチを張れるようにしたものです。往復1回約20分で3aの作業が完了します。連作障害は発生しておらず、6月中旬に1度消毒すれば済むといいます。
機体前方のタンク2個から薬剤を吸い上げ、ハローに取りつけた8カ所にノズルから打ち込みます。手元にはバルブを設置、片方のタンクが空になれば強い薬剤を吸い込むことなく、もう片方のタンクを切り替えられます。

機械は9条植え用。前進するとマルチを張ると同時に溝切りと土寄せが行え、仕上げにスポンジローラーで土とマルチを密着させます。復路では、被服が済んだ隣のマルチと被覆中のマルチを粘着テープで接着する仕組みです。
「購入時は気づきませんでしたが、管理機には四つのタイヤが同時に同じ方向を向くクラブ走行機能が付いており、マルチに乗り上げることなく奇麗に張ることができます」と、意外な効果にほほ笑みます。
「誰でもきつい作業は楽にしたいと思っているはずです」と石井さん。「元々、機械いじりは好きなので、これからも作業を楽にするツールを開発したいです」と意気込みます。