那須塩原市上赤田で酪農と和牛繁殖を営む木澤裕明さん(31)方では、2016年に株式会社リモート(大分県別府市)の分娩監視・発情発見システム「モバイル牛温恵(ぎゅうおんけい)」を導入。

分娩時の事故低減などに成果を上げています。牛温恵は畜産クラスター事業の活用して取り入れました。裕明さんは「分娩のタイミングを事前に知ることができるのは大きなメリットですね」と話します。
現在、繁殖和牛40頭と子牛20頭、搾乳牛17頭を飼養。父・敏雄さん(67)が搾乳、母・ちよ子さん(68)が哺乳、裕明さんが給餌を担当しています。
牛温恵は分娩の予兆である牛の体温低下を捉え、分娩前の体温変化のパターンを検知し通知するものです。分娩が近い母牛の膣内に「6本爪ストッパー(分娩監視用)」を装着した「体温センサー」をセットします。

体温を5分ごと0.1℃単位で計測。体温データは牛舎設置の「親機」からNTTドコモの基地局を通じ監視サーバに送られ、蓄積・分析されます。
分娩約24時間前を知らせる「段取り通報」、1次破水でセンサーが膣外に出た際の「駆け付け通報」をメールで通知します。裕明さんは「自宅から牛舎まで距離があるので、鳴き声などから異変を察知するのが困難でした。牛温恵導入後は外出先でもメールが届くので助かってます」と話します。
深夜の分娩も少なくなく、導入後は安眠でき、分娩事故による収益面での改善だけでなく、体調・精神面での改善も非常に大きいといいます。スマートフォンからログインできるユーザー専用サイトで、センサーを取り付けた牛の体温をグラフで把握できるのも魅力の一つです。

リモートの宇都宮茂夫代表取締役社長(66)は「『分娩を失敗させない、分娩事故ゼロ』を目指しています。全国で導入事例があり、鹿児島県の畜産農家では分娩事故率が2~3%だったのが、導入後4年間で0.2%と1/10ほどになった実績もあります」と説明します。
牛温恵は親機1台20万円、子機1台10万円、センサー1本40,700円、6本爪ストッパー1個6,800円、3本爪ストッパー1個4,300円、挿入棒1本2,000円。この他、月々の基本料金3,500円とセンサー1本あたり監視料800円がかかります(価格は全て税抜き)。
裕明さんは「まだ勉強中のため、まずは頭数を減らさないことが目標です。分娩に対して心構えができるので、とても重宝しています」と話します。